解体工事で建物を取り壊す際には、当然それまでそこで使っていたライフラインは使わなくなるため、停止する必要があります。しかし、すべてのライフラインを一律で供給停止してしまったり、設備を撤去してもらったりしなければならないのでしょうか?残しておくべきものは本当にないのでしょうか?
今回は、解体工事の際のライフラインについて、主に電気・ガス・水道の扱いを、「停止するのか、しないのか」という観点から見ていきましょう。
解体工事前の電気の扱い
連絡時には「供給停止」と「設備撤去」の依頼を
解体工事前のライフライン撤去は必須ですが、「うっかり忘れていた」では済ませられない最重要なものが、電気とガスです。
なぜかというと、これらは供給停止・設備撤去をきちんと行っていないことで容易に重大な事故につながりかねないからです。
電気の場合は、たとえば通電中の電線を重機のアームが引っ掛けて切断してしまったり、作業員が触れてしまったりして、最悪な場合死者が出る事故にもなってしまいます。
このため、電気停止の連絡を入れる際には、必ず「解体工事を行うので、停止だけではなく設備の撤去もお願いしたい」とはっきり伝えることが重要です。通常の電気停止だけではアンプブレーカーやメーター、引き込み線などの撤去までは行わないからです。
設備の撤去までしてもらわなければ、危険は残ったままです。忘れないようにしておきましょう。
電力会社に供給停止依頼の連絡を入れる際には、具体的に以下のことも伝えられるようにしておきます。
・電気を停止する場所の住所
・契約者の氏名および連絡先
・連絡者の氏名および連絡先
・撤去する時期
・お客様番号もしくはメーター番号
連絡には余裕をもって
電気の設備撤去工事は、連絡してすぐに取り掛かってくれるというものではありません。連絡して、最短でも5営業日後となります。しかもこれもあくまで「最短」であり、業者や時期によっては2週間以上かかることも可能性としては考えられるのです。
解体工事の開始前ぎりぎりに連絡すると、撤去作業が間に合わず、工期に影響が出るということもあるでしょう。スケジュール的に余裕をもって業者に連絡するようにしておきたいところです。
また、撤去の際には立ち合いが必要になります。施主自身のスケジュールも考えて撤去工事の日程を決めないといけないため、やはり早めに動いておくようにしたいですね。
工事中の電気の使用について
工事の最中に電気を使用するシーンもあるはずですが、その際には設備がすでになくなってしまった現場でどう対処するのでしょうか。
こういった場合、解体業者が発電機などの仮設設備を用意してまかなうことがほとんどであるため、心配はいりません。
ただし工事中に発生する電気代に関しては、業者が支払うのか施主がもつことになるのか、あらかじめ確認しておいた方がのちのちのトラブルになりません。すでに工事代に組み込まれていることもあります。まずは詳細をはっきりさせておきましょう。
解体工事前のガスの扱い
供給停止依頼の連絡を入れる
ガスは電気と並んで、解体工事の際の停止を絶対に忘れてはいけないライフラインです。連絡先は、ガスボンベやガスメーター、毎月の請求書などに記載されているはずなので、そのガス会社に連絡しましょう。
このとき、もっとも注意しなければいけないのは、電気同様単純に「供給停止依頼」するだけでなく、「解体工事をするから設備も撤去してほしい」ということも伝えなければいけない点です。こうはっきり言わないと、ガス管の撤去はしてもらえない恐れもあります。
加えてガス会社に連絡を入れる際には、具体的に以下のことも伝えられるようにしておきましょう。
・撤去する場所の住所
・契約者の氏名および連絡先
・連絡者の氏名および連絡先
・撤去する時期
・お客様番号もしくはメーター番号
電気と同様、ガスに関しても管を重機などで損傷してしまうと、引火・爆発といった大事故を引き起こす恐れがあります。前述した通り、工事前の供給停止・撤去依頼の連絡は絶対に忘れないように気をつけましょう。
状況に応じた対応
ガス管の場所などの状況によっては、ガス管の撤去が必要ない場合もあります。
たとえば、小規模な解体工事であればガスの閉栓だけで問題ないことがありますし、まずはガス会社の担当者に現場を確認してもらい、判断を仰ぎましょう。
ちなみにガスの閉栓やメーターの撤去のみであれば無料であることが多いのですが、一般的にガス管の切断や撤去には費用がかかります。頭に置いておきましょう。
また、解体工事中に地中の思わぬ場所からガス管が出てきた、という事例もあります。こういった場合もすぐにガス会社に連絡して専門の担当者に判断と指示を仰ぎましょう。
解体工事前の水道の扱い
水道だけは基本的に停止しない
電気とガスに関しては「停止・設備撤去」の両方が必要ですが、水道は解体工事時のほとんどの場合、供給を停止してもらう必要がありません。
なぜかというと、解体工事中は塵や粉じんの飛散を抑えるために、散水を行いながら作業を進めます。そのときに水道を使うからです。
電気のように仮設の設備を用意してどうにかできる量ではないので、水道はそのままにしておいて、現場で使うわけなのです。
「水道だけは止めなくていい」ということを、まずはしっかり覚えておいてください。
工事前に精算しておくべきなのか
電気代と同様、水道も工事中に使用するのであれば、その際の代金は業者と施主のどちらが払うのかというと、やはり両社の話し合い次第です。たいていの場合は、業者が支払うということになっているようです。
しかし、いずれにしても両社の認識違いでトラブルにならないように、あらかじめ見積の際にどちらの支払いになるのか、またその場合はどのように精算するのか、などという点は話し合って決めておけば安心ですね。
業者が支払う場合
工事中の水道代を業者が支払う場合には、工事開始直前にいったん水道代を精算しておくと、わかりやすくなります。
というのも、工事前まで施主がそれまでに使用していた生活用水の水道代と、工事でこれから発生する水道代を分けて管理できるようになるからです。
また、業者によってはあらかじめ水道会社に連絡を取って、工事期間中の水道代については業者に請求が行くようにとの手続きを済ませてくれていることもあります。
施主の支払いになる場合
施主側の負担になる場合は、供給停止さえしなければあとはそのままでかまいません。解体前までに使用していた生活用水の水道代と、工事中に発生した水道代の両方を施主が支払うので、特に精算する必要もないからです。
請求金額は、「5千~1万円」程度で見ておけばいいでしょう。季節や現場の状況などにもよりますが、どんなに多くてもそれ以上になることはめったにないはずです。
まとめ
解体工事の際、電気とガスに関しては、事故防止のため、停止のみでなく設備の撤去も必ず行っておかなければなりません。一方で、水道は工事中に粉じん飛散を防止するため散水を行う必要から、停止する必要はないということに注意が必要です。
同じライフラインでも、扱いが変わります。業者と確認しあいながら、間違いの内容に進めましょう。
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