解体工事の際には、電気やガス・水道などのライフラインを停止する手続きが必要になります。特に電気に関しては、きちんとした手順を踏まないと大きな事故につながりかねないため、注意が必要です。
今回は解体工事の際に「電気を止める」ことに焦点を当て、事故や注意点などについて詳しく見ていきましょう。
解体工事前に必ずするべき「ライフラインの撤去」
ライフラインとは、いわゆる「インフラ」のこと。私たちの生活に欠かせない「電気・ガス・水道・電話・ケーブルテレビ」といった設備のことをいいます。
解体工事の際には、これらライフラインも必要がなくなるため、停止や撤去の手続きを行います。特に電気やガスについては、きちんとした手順を踏んでしっかりと設備まで取り除いておかないと、大きな事故につながりかねません。
解体工事の日程が決まると、解体業者から「ライフラインの撤去をお願いします」と指示が入ります。施主として、現場の安全確保のためにもライフラインの撤去にはしっかり責任を持たなければならないのです。
電気の事故にはどのようなものがあるのか
電気の事故は、容易に大きなものにつながりかねないため、特に気をつけなければならないものです。
まずは発電所でできあがった電気が、家庭までどのように配られてくるのかというところから知っておきましょう。
配電の仕組み
発電所で作られた電気は、電圧を上げられてから送電線を通って各地の変電所を経由、その場ごとの適切な電圧に下げられながら配電用変電所の元まで送られます。それから街中の電線に配電され、電柱の上に設置されている「柱上変圧器」によって100Vもしくは200Vに変圧されてから、各家庭に届けられます。
電線から各家庭にのびているのが「引込み線」です。電柱から軒先などに取付けられている引込み線取付け点までの部分を指します。そして引込み口配線を経由して、屋内にある電気メーターへとつながっていくのです。
まずはこの配電の仕組みを頭に入れておいてください。
考えられる事故
電線切断での停電
敷地や道路が狭い現場だと、重機のアームが電線を引っ掛けて切断してしまう、という事故がよく聞かれます。
通電したままの切れた電線も大変危険ですが、電線の切断によって周辺地域が停電してしまうことも考えられるでしょう。
感電
通電している状態の電線を作業員が触れたり切断したりして、感電に至るという事故の事例もあります。最悪の場合、死者も出るような事故につながってしまいます。
事故が起きてしまう原因
電気の事故に限りませんが、事故を未然に防ぐためには、「安全衛生教育」と「KYミーティング(危険予知のためのミーティング)」が必要です。
工事前に、どのような危険性が予想されるかということを作業員で話し合い、安全意識を高めることを目的としています。
たとえば工事作業計画を作成することもせず、現場で上司から逐一口頭指示を受けて作業を行う、というような仕事の仕方は、すぐ目の前の作業ばかりに意識が向いてしまい、安全意識も育たないでしょう。
施主としては、工事を依頼する際に「できるだけ費用を安く抑えたい」と思う気持ちはあるはずです。
しかし、無理な値下げ交渉に承諾した業者はどこからコストを削っていくかというと、まずこういった安全管理・対策を犠牲にしていく可能性が高いのです。
現場で事故が起きたからといって、施主の責任は問われません。しかし非常に後味が悪い思いをするのは間違いないでしょう。施主としても、解体業者の安全管理体制には目を配っておきたいところです。
このように業者には安全管理体制をきちんと構築してもらうと同時に、さらに事故を未然に防ぐには、そもそも事故の要因を取り除いておく…すなわち「電気は停止しておく・設備は撤去しておく」ということも忘れてはいけないのです。
電気を停止する手順
解体工事前には、電気を停止するだけではなく、「電気設備・配線を撤去する」ということまで必要です。
前述した「配電のしくみ」における「引込み線」やその先につながっている屋内の電気メーターも含めての撤去までを意味するのです。
電力会社に連絡を入れる
まずは管轄の電力会社に、電気を停止してほしい旨の連絡を入れましょう。
このときもっとも気をつけなければいけないことが、「現在の建物を解体工事するため、電気の撤去依頼をしたい」と伝える点です。通常の電気停止手続きではメーター・アンプブレーカー・引き込み線などは撤去しないので、このようにはっきり伝えないと停止扱いだけになってしまい、設備撤去まで至らないこともあるからです。
電力会社に伝える内容は、次のようなことです。
・電気契約者の氏名
・連絡者の氏名、連絡先電話番号、関係
・電気を停止・撤去する場所の住所
・撤去する時期
・お客様番号もしくは電気メーター番号
お客様番号やメーター番号は、電力会社からの検針票や請求書、電気メーターなどで確認することができるはずです。
連絡は早めに入れること
電気設備の撤去工事は、連絡を入れて最短で5営業日経過後からのスタートとなることが多いのですが、これは本当に、あくまで「最短」です。場合によっては、10日や2週間かかることもあるのです。
しかも、電気停止だけでなく設備撤去の場合、立ち合いが必要であるため、電力会社と自分のスケジュールも合わせなければなりません。
かといって、解体工事直前までその家屋に住んでいるのであれば、あまりに早く電気を停止してしまうわけにもいかないでしょう。引越しなどのスケジュールともうまくバランスを取る必要があります。
とにかく、解体工事の日程が決まったら、まずはすぐに電力会社に相談連絡をいれるといいですね。
電気撤去工事
電気撤去の当日は、電気の停止後に、前述したようにメーターやアンペアブレーカーなどの電気設備・引き込み線などすべてのものを撤去します。
ここまで行ってようやく解体工事に支障のない状態となります。
解体工事中の電気の使用はどうする?
設備まで撤去してしまい、完全に電気を使えない状態にすると、工事中に電気を使いたい場合はどうなるのでしょうか。工具や機械を使う際に、電気が必要なるシーンはありそうですよね。
こういうときには、たいてい業者自身が発電機などの仮設電源設備を持ち込んで使用するため、施主としては心配ありません。むしろ問題は「そのとき発生した電気代は誰が支払うのか」という点です。
これについては「業者による」といったところです。初めから工事代に含まれていることもあれば、のちのち追加請求してくるところもあります。
トラブルのもとになりかねない部分なので、「業者が負担するのか、施主が払うのか。請求はどう行うのか」ということに関しては、契約時にあらかじめ約束を取り交わしておくと安心です。
水道とガスの停止について
電気以外のライフライン、特に水道とガスに関してはどうするべきなのか、今回は簡単に触れておきます。
水道
水道に関しては、粉じん飛散防止のために散水を行うことが多いので、工事中も供給を止めないことが多いのです。ただ、工事が始まる前までにいったん使用料を清算しておくといいでしょう。
ガス
ガスは電気と同様、供給停止だけではなく設備撤去もしておかないと、ガス爆発などの事故につながりかねません。敷地内のガス管を切断する作業が必要となります。
まとめ
電気は設備の撤去を怠ると、電線を切ってしまったり感電事故が起きたり、という恐れがあります。解体工事の日程が決まり次第電力会社に連絡をつけて、撤去の工事を依頼しましょう。
現場の安全確保に関しては、施主としてもしっかり注意しておきたいところです。電気とガスについては特によく見ておきましょう。
コメント